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「家庭用説教集」は1916年から1925年の間に成立したブレヒトの詩を収めている。
小型の讃美歌本のような体裁に製本してあり,当時は「悪魔の祈祷書」ともよばれたそうだ


「木のグリーングリーンによる朝の挨拶」

この詩は、ブレヒトの「家庭用説教集」のなかに収められている詩ですが、
1927年に初版が出版され、その後ブレヒトの手によって改定された作品をあらためて刊行された「家庭用説教集」があり(1956年以降)下記に掲載した2.3の「グリーン樹への朝の挨拶」は、(大久保 寛ニ著「ベルトルト ブレヒト 樹木を歌う」より)
初版の「家庭用説教集」に収められている詩と改定後の詩を掲載しました。
野村 修訳の「木のグリーンによる朝の挨拶」は萩 京子作品集(CD)に掲載された
詩を載せてあります。




   1
木のグリーンによる朝の挨拶
      野村 修 訳

グリーン、ぼくはきみに詫びなくてはならない。
昨晩(きのう)ぼくは眠れなかった、嵐が騒がしかったから。
戸外(まどのそと)を覗いてぼくは見た。
きみは揺れていた酔った猿のように。
ぼくはそう口に出した。

今日きみの裸の枝々からはまだこぼれている、
多少の涙のしずくが。
しかしきみにはいま、きみの値打ちがわかっている。
きみは生涯でもっとも厳しい闘いをたたかった。
剥鷹でもがきみをうかがっていた。
いまぼくにはわかる。
きみは苛烈なまでに
譲歩しぬいたからこそ、
今朝もすっくと立っているのだ。

きみの達成をまえにして今日ぼくは思う。
並たいていのことではなかったろうな、
こう高く伸びるのは
アパートとアパートのあいだで、グリーン、
こんなに高く
嵐が昨晩(きのう)ように迫れるまでに。




   2
グリーン樹への朝の挨拶
       1927年に出版された「家庭用説教集」より
       大久保 寛ニ 訳

ぼくは昨晩、君にひどく悪いことをしてしまった。
ぼくは眠れなかったんだ、風があんなにも音をたてていたから。
ぼくが目を上げた時、気がついたんだ、君が揺れていたのに
酔っ払った猿のように、ぼくは君に対して恥ずかしいよ、グリーン

ぼくはあっさり認めるよ、ぼくが間違っていたと。
君は君の生涯でいちばん過酷な戦いを戦ったんだ。
禿鷹が君に興味をいだいていた。
君はいま、君がどんなに褒められていいか、知っているね、グリーン

今日、黄色い太陽は君の剥ぎ出しの枝に輝いている。
しかし君はまだやっぱり、涙を払い落としているんだね、グリーン。
そうだ、ばくらは群れをつくるのに慣れていない・・・・

ぼくは君を見てから,ぐっすり眠れたんだ。
でも君は今日は多分疲れてるだろう、決して些細なことじゃない、
家々に囲まれて
そんなに高く、グリーンよ、嵐が昨夜のように君のところへやって来るほどに。



   3
グリーン樹への朝の挨拶
       1956年に改定版の(ブレヒトによる改定)「家庭用説教集」より
       大久保 寛ニ 訳

グリーンよ、ぼくは君に許しを乞わなければならない。
ぼくは昨晩寝つけなかったんだ、嵐があんなにも音を立てていたから。
ぼくが目を上げた時、気がついたんだ、君が揺れていたのに
酔っぱらった猿のように。ぼくはそれを声に出して言った。

今日、黄色い太陽は君の剥き出しの枝に輝いているんだね。グリーン。
しかし君はいま、君がどんなに褒められていいか、知っているね。
君は君の生涯で一番過酷な戦いを戦ったんだ。
剥鷹が君に興味を抱いていた。
そしてぼくには判る、ただ一つ、君は君の不屈の
柔軟さで、今朝もなおまっすぐに立っているんだ。

君の成功を目の前にして、
ぼくは今日思う、
そんなにまで高く伸びることは、決して些細なことじゃない
アパート群に囲まれて、そんなに高く、グリーンよ、
嵐が昨夜のように君のところへやって来るほどに。












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